奄美大島「大島紬」の話
沖縄、奄美大島で生まれた大島紬。
シャキっとした着心地と軽くて強い生地でとても人気があり有名な紬です。
大島紬といえば泥染めですが、泥だけで染めても美しい黒茶は出てきません。
泥染めとは、泥染めの前にまずテーチ木染めをします。
テーチ木(車輪梅の木)の枝を細かく割り大きな釜に入れ、じっくりと煮立てます。そこから汁を取り出し、筵をつけ込む作業を約20回繰り返します。
そして泥田に漬け色に深みを出す工程が1回。
これを4セット行います。
なんと染めだけで84工程!
こうするとテーチ木の煮汁に含まれるタンニン酸と、泥に含まれている鉄分が反応して、黒く染まっていくのです。
奄美大島の泥田には多くの鉄分が含まれていて、泥の粒子も非常にきめ細かいそうです。
そのため、生地を傷めることなく染められます。
さらに、テーチ木染めと泥染めとの繰り返しで、糸の表面を薄い膜が覆い、樹脂加工の役目を果たしている為、汚れが付きにくく、水にも強い性質を持っています。
ある問屋の社長に聞いた話ですが、奄美の人々は薩摩藩から紬を着る事が許されなかった時代があり、 代官の取り調べを受けた農家の主婦が、あわてて自分用に隠し持っていた大島紬を年貢に取られないように泥田の中に隠したそうです。
それをあとで取り出してみたら、テーチ木染めの茶褐色が、なんともいえない深い黒茶に染めあがっていたそうです。
大島紬の魅力は、着心地の良さ、軽くて着崩れがしない、着込めば着込むほど肌になじむ、汚れにくい、水に強いなど、ほかの着物にはない特徴が沢山あります。
是非一度お召になってください!